Angloのブログ

英語学習における有益な記事を書いていきます。

教材としてのAnimal Farm

大学に提出するレポートをのせます。たぶんイロイロあとで訂正しますが。

 

今回は、ジョージ・オーウェルGeorge Orwell)の“Animal Farm”について教材として言及させてもらいたい。学校教材としてこの作品が優れている点は、英語教材としては勿論のこと、政治、歴史、働き方に至るまで、多岐にわたる分野を網羅していることである。どこかコミカルなおとぎ話のようにも読める点でも低年齢向けに扱いやすい。

まず英語教材としては、本文をそのまま例文として教材に使ったとしても差しさわり無いほど文章が模範的である。例えば“Mollie, it was true, was not good at getting up in the mornings, and had a way of leaving work early on the ground that there was a stone in her hoof.”(大石 55)という一文の中には“be good at~”「~が得意である」という中学レベルの連語から、“on the ground that~”「~という理由で」のような大学入試レベルの表現まで入っている。また、文章の長さも読解の練習としてはちょうどいいので、主語の見極めを試す時などに重宝するであろう。英文法的にも間違いがほぼ無いので、文法的お手本としても使える。

英語学習教材としてのみならずこの小説は政治を考える上でも、多くの問題提起がある。小説中、追放されてしまう農場主のジョーンズさんに代わって豚のナポレオンが農場を統治する。教材として使うとすれば、「権力を移動させる手段は他に無かったか。」「他に手段があるとすれば何か。」「自分がこの中にいたらどう動くか。」など、生徒への無数の問題提起が可能である。

学びという意味では、豚を中心とした家畜たちが農場の支配権を取ってからの方が、物語から多くのことに気づけるだろう。例えばこの話では、教養のある動物と、教養の無い動物が大きく二種類登場する。字が読めない家畜たちは、法律の条文を読むのさえままならず、豚の政治家から巧みに騙されてしまう描写がある。この描写一つ取っても「豚以外の教養ある動物はどう行動するべきだったのか。」「無教養な家畜は教養をつけるべきか。また、そのためにはどうするべきか。」「自分はどの家畜に近いか。また、どの家畜のようになるべきか。」など、おそらくここでも生徒に考えてもらう多くの点があるだろう。学校の先生としては「やはり教養をつけるために勉強は必要である。」などの模範解答を導いてしまいそうだが、この小説では字が読める家畜も豚によってコントロールされている。それゆえ、考えの浅い簡単な結論を出すだけではなく、より深い議論が可能ともいえる。

他にも、この物語の中では、政治家が取りがちな行動が散見される。例えば、牛から絞ったミルクをどう扱うか、というエピソードがあるのだが「ミルクは見張っておく。干し草の収穫の方が大事だ。」(大石 49)とナポレオンが言ってごまかすシーンがある。結局は豚が独り占めするのだが、実際の政治家をモデルにしているので、不正を隠蔽する政治家の手法が非常にリアルである。そして、日本の政治家と行動パターンが酷似している部分も見逃せない。「現在の日本の政治家との共通点はどこか。」「日本の政治家が同じことをしたら、国民としてどう行動するべきか。」などの議題を立ててみても面白い教材になるだろう。ニュースを見ている生徒などは「政治家の不祥事がうやむやになる過程は日本と同じではないか。」等々、具体的な政治的事象を思い浮かべるかもしれない。また、動物のための老後施設の予定が反故になる描写もあり、日本の年金制度などと重ね合わせて学生に考えさせると深い題材になるだろう。

 次に外せない要素としては、各動物の働き方がある。この小説は旧ソビエトがモデルとなっていることもあり、一面では国家運営の話として学ぶことができる。しかしながら、今日の日本では農場を企業として見る方が教訓的かもしれない。例えば、豚が運営する動物農園で馬のボクサーは三頭分の仕事をこなす。ロバのベンジャミンはジョーンズさんがいた時と同じように頑固に働き、余分な仕事はしない。猫や、白馬のモーリーは仕事をサボり、モーリーに至っては自分に合った農場主の農園へ出て行く。そして、誰よりも一生懸命働いたボクサーは最後、屠殺場に送られ殺される。「働き方として最も正解に近いのはどれか。」「自分は将来的にどう働いていくか。」などの命題を出してあげれば、職業や働き方を考える上でいい教材になるだろう。

 最後に、この本は歴史上の人物を家畜動物などのキャラクターとして描いている点が、教材として最も素晴らしいところである。豚のモデルであるスターリンは、飢餓に苦しむ民衆を見殺しにしたり、政治的粛清を行ったりと、小中高生に詳細を教えるのははばかられる人物である。しかし、豚が姑息な手段を使って不正を侵していても、どこかマヌケに見え、客観的に楽しく読むことができる。被害を受けるのも家畜のキャラクターなので、年齢が低い学生にはフィクションとして薦めてもいいかもしれない。いずれにせよ、自ら考える力を鍛えるにはもってこいの一冊であると言える。

 

(1993 words)

 

Works Cited

 

大石 健太郎.『対訳 動物農園―おとなのおとぎばなし』. 一藝社, 2010

 

Orwell, George. Animal Farm, Penguin Books, 1945

 

Hu, Zheng. www.huzheng.org. Animal Farm.  http://www.huzheng.org/geniusreligion/AnimalFarm.pdf , (accessed 2020-10-06)