Angloのブログ

英語学習における有益な記事を書いていきます。

【英語・英文学・英文科】Fスコット・フィッツジェラルド、The Great Gatsby(グレート・ギャツビー)の解説、和訳⑮

初回から数えて15回目になります。トムが席を電話のため席を外しまし、デイジーがアンニュイな感じでニックに話しかけます。彼女はどうやら結婚には少し後悔があるようです。

Daisy took her face in her hands,

デイジーは両手で顔を包んだ。

‘We don’t know each other very well, Nick,’ she said suddenly.

「ニック、私たちって、お互いのことをあまり知らないね」と彼女は突然言った。

‘Even if we are cousins. You didn’t come to my wedding.’

「従兄妹だとしても。あなた私の結婚式にも来てくれなかったでしょう」

‘I wasn’t back from the war.’

「戦争から戻ってなかったからね」

第一次世界大戦 1914年7月28日~1918年11月11日

‘That’s true.’ She hesitated. ‘Well, I’ve had a very bad time, Nick, and I’m pretty cynical about everything.’

「そうよね」と、彼女はためらった。「とってもひどい時間を過ごしたわ、ニック。わたし何に対してもすごくヒネくれちゃってるの。」

cynical 皮肉な

Evidently she had reason to be.

明らかに彼女には、そうなる理由があった。

I waited but she didn’t say any more, and after a moment I returned rather feebly to the subject of her daughter.

続きを待ったが、彼女はそれ以上は何も言わなかった。しばらくして私は、やや弱々しく彼女の娘の話を振った。

‘I suppose she talks, and—eats, and everything.’

「もう話したり、食べたり、イロイロできるんじゃない?」

suppose 思う、推測する

‘Oh, yes.’

「そうね」

 

考察:トムとの結婚を後悔しまくりのデイジーですが、「じゃあ何で結婚したの?」とか「なんで別れないの?」とか感じますね。物語の後半でその辺の事情はひも解かれます。この物語は短い期間の話なので、一時的なマリッジブルーとも解釈できます。(※「マリッジブルー」は和製英語です)

 

使える英語:‘I suppose she talks.’「(赤ちゃんは)話せると思う」というセリフが本文にありましたね。日本人には ‘I think’ が口癖の人は多いかもしれません。あんまり何回も‘I think’を使うと、気になるネイティブスピーカーもいるらしいです。また、supposeを使った方が日本語の「~と思う」のニュアンスに近いです。

 

スピードラーニング英語 1~12巻(SEASON 1)セット

価格:50,688円
(2020/10/20 02:15時点)
感想(2859件)

The Great Gatsby GRT GATSBY [ F. Scott Fitzgerald ]

価格:1,413円
(2020/10/20 02:16時点)
感想(0件)

【英語・英文学・英文科】ジョージ・オーウェル、Animal Farm(動物農園)の解説、和訳⑧

初回から数えて8回目になります。前回は動物たちの働き方に関して読んでいきました。今回は動物たちが文字を学び「動物主義(共産主義」について学んでいきます。しかしながら豚と一部の動物以外は文字を読むのに苦労します。

 

 

The pigs had set aside the harness−room as a headquarters for themselves.

豚は馬具室を自分たちの本部として取っておいた

 

 

By the autumn almost every animal on the farm was literate in some degree.

秋までに農場のほとんど全ての動物がある程度読み書きができていた。

 

literate 読み書きできる,教養のある ※to some degree ともいう

As for the pigs, they could already read and write perfectly.

豚たちに関しては、既に完璧に読み書きができていた。

 

The dogs learned to read fairly well, but were not interested in reading anything except the Seven Commandments.

犬たちはかなりうまく文字を読めるようになったが、七つの戒律を除いては読むことに関心を示そうとしなかった。

 

learned to〈…〉できる[する]ようになる, 〈…の仕方を〉学ぶ,覚える

Muriel, the goat, could read somewhat better than the dogs, and sometimes used to read to the others in the evenings from scraps of newspaper which she found on the rubbish heap.

ヤギのミュリエルは犬よりも読むのがいくぶん上手く、ゴミの山から見つけてきた新聞の切れ端を夜になるとときどき取り出して読んでいた。

 

Benjamin could read as well as any pig, but never exercised his faculty.

ベンジャミンは豚と同じくらい読むのが得意だったがその能力(才能)を積極的に用いようとはしなかった。

 

 

So far as he knew, he said, there was nothing worth reading.

自分の知る限りでは読む価値があるものは何もない、と彼は言うのだ。

 

worth ~ing ~する価値がある

 

Clover learnt the whole alphabet, but could not put words together.

クローバーは全てのアルファベットを憶えたが、単語をつなぎ合わせることができなかった。

 

 

Boxer could not get beyond the letter D.

ボクサーはというとDから後ろの文字を憶えることができなかった。

 

 

It was also found that the stupider animals, such as the sheep, hens, and ducks, were unable to learn the Seven Commandments by heart.

また羊や鶏、あひるなどの特に頭の弱い動物は七つの戒律を憶えることすらできなかった。

 

 

After much thought Snowball declared that the Seven Commandments could in effect be reduced to a single maximnamely: “Four legs good, two legs bad.”

さんざん考えた揚げ句、スノーボールは七つの戒律が事実上ひとつの格言になったことを発表した。それはつまり「四本足は善い、二本足は悪い」というものだった。

 

in effect 事実上 be reduced to ~に成りはてる

 

 

The birds at first objected, since it seemed to them that they also had two legs, but Snowball proved to them that this was not so.

まず最初に鳥が反対した。なぜなら彼らも二本足のように見えたからだ。しかしスノーボールはそれは違うということを彼らに説明した。

 

 

“A bird’s wing, comrades,” he said, “is an organ of propulsion and not of manipulation.

「鳥の羽根というのはだな、同志諸君」彼は言った。「鳥の羽根というのは推進のための器官であって物を操作するための器官ではない。

 

 

 It should therefore be regarded as a leg.

したがってと見なすべきだ。

 

 

The distinguishing mark of man is the hand, the instrument with which he does all his mischief.”

人間と区別する目印は手だ。つまり悪さをする手先(手段)だ」

 

instrument 道具、手先、手段  mischief わるさ、いたずら

 

 

考察:スノーボールは言葉で説明するのが上手です。しかしながら、雄弁さは良く使えば今回のように使えますが、彼はこれ以降、悪事に使い始めます。私も、論理的に説明されるとついつい変なことでも納得させられたりします。政治家がそういうことをし始めたら要注意です。日本の政治家は大丈夫でしょうか?

 

使える英語:be worth ~ing“はよく聞きます。ぜひ使いましょう。

例) The book is worth reading.(その本は読む価値がある

 

スピードラーニング英語 1~12巻(SEASON 1)セット

価格:50,688円
(2020/10/17 19:53時点)
感想(2859件)

動物農園 おとなのおとぎばなし [ ジョージ・オーウェル ]

価格:2,090円
(2020/10/17 20:04時点)
感想(0件)

【英語・英文学・英文科】Fスコット・フィッツジェラルド、The Great Gatsby(グレート・ギャツビー)の解説、和訳⑭

初回から数えて14回になります。どうやらトムには妻・デイジーの他に愛人がいます。若い男と女がいれば珍しいことではないですが、トム・ブキャナン、ちょっと良くないですね。ニックはこの辺にはあんまり興味無さそうですが、ョーダン・ベイカはこういう噂が好きそうです。

 

 

The butler came back and murmured something close to Tom’s ear whereupon Tom frowned, pushed back his chair and without a word went inside.

執事が戻ってきて、トムの耳元で何かをささやいたとっさにトムは顔をしかめ、椅子を後ろへ押し、何も言わずに屋内に入って行った。

 

whereupon そうすると,すると(すぐ)

 

 

Miss Baker and I exchanged a short glance consciously devoid of meaning.

イカーさんと私は、意味無さげに互いに意識しながら目配せをした

 

devoid of〔…が〕欠けていて,なくて  consciously意識して,意識的に

glance ちらりと見ること

 

‘This Mr. Gatsby you spoke of is my neighbor——’ I said.

「あなたが話したギャツビー氏は僕の隣に住んでいて……」と私は話そうとした。

 

 

‘Don’t talk. I want to hear what happens.’

「今は話さないで。何が起こってるのか聞きたいの」

 

 

‘Is something happening?’ I inquireinnocently.

「何か起こってるの?」と私は何気なく尋ねた

 

 

‘You mean to say you don’t know?’ said Miss Baker, honestly surprised. ‘I thought everybody knew.’

「知らないって言ってるの?」とベイカーさんは本当に驚いて言った。「みんな知ってると思った」

 

honestly本当に、正直に

 

 

‘I don’t.’

 「知らないなあ」

 

 

‘Why——’ she said hesitantly, ‘Tom’s got some woman in New York.’

「ええっとね」と彼女はためらいがちに言った。「トムはニューヨークに女がいるのよ」

 

f:id:Anglo:20201016141746j:plain

‘Got some woman?’ I repeated blankly.

「女の人がいる?」と私はぼんやりと繰り返した。

 

Miss Baker nodded.

ミス・ベイカーはうなづいた

 

 

‘She might have the decency not to telephone him at dinner-time. Don’t you think?’

「夕食の時間に電話をかけてこないくらいの礼儀があってもいいのに。そう思わない?」

 

might [非難・遺憾の意を表わして] …してもよさそうなものなのに

 

 

考察:最近の日本は不倫に厳しいですが、トムも不倫してますね。個人的に不倫は必ずしも悪いとは思ってませんが、トムに関してはツッコミどころ満載です。表面的には正しそうな人が悪いことしてると、メチャクチャ悪いヤツに見える法則、ありますよね。政治家とか。

 

使える英語:本文中 “‘You mean to say you don’t know?’ said Miss Baker, honestly surprised.”『「知らないって言ってるの?」とベイカーさんは本当に驚いて言った。』とありますが、honest「正直な」にはいろいろ使い方があります。日本語でいう「ぶっちゃけ・・・」みたいな言い回しには “To be honest,….” “Honestly (speaking),….”などがあります。

例)Honestly, that’s all the money I have.正直なところこれしか金がない.」

 

スピードラーニング英語 1~12巻(SEASON 1)セット

価格:50,688円
(2020/10/16 13:56時点)
感想(2859件)

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー) [ フランシス・スコット・フィッツジェラルド ]

価格:1,100円
(2020/10/16 14:09時点)
感想(73件)

【論文】小説英文学史概観

大学に提出する論文をのせます。

 

 

英文学というカテゴリーで考えれば、最古の作品は8世紀ごろに書かれた『ベーオウルフ(ベオウルフ)』の写本とになるだろう。現代英語文学のルーツを探れば、シェークスピアを起源としてもいいだろう。しかしながら、イギリスでは17世紀まで絶対王政の中、印刷出版が自由にできない上に、事前検閲などの言論統制が行われていた。1660年の王政復古から1688年の名誉革命が起こった結果として1695年に特許検閲法が廃止れた。18世紀に入ってから小説が飛躍的に発展した理由として、言論出版の自由が保障されていたことは大きい。こういった歴史的流れの中で、痛烈な皮肉や批判を含んだ小説が発展したといえる。イギリス最初の日刊新聞『ザ・デイリー・クーラント』(The Daily Courant) が創刊されたのも、1702年のことである。また、18世紀後半になるとイギリスでは産業革命により階級社会も生まれ、知識や教養のある中産階級が増えた。このことも、この時期に小説が発展した原因となった。

最初に小説が民衆に広く流行した時期は、ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』(1719年)や、同じく空想旅行記の系譜を引き継いだジョナサン・スウィフトの『ガリヴァー旅行記』(1726年)ということになる。前述の通り、イギリス英文学の一つの傾向として、社会風刺や皮肉などを盛り込む傾向があるが、『ガリヴァー旅行記』においても例外ではない。アイルランドの民衆から搾取することで富を享受するイギリス社会を目の当たりにしたことが、この小説を書く一つのきっかけとなっている。また、ディストピア小説の側面も持っているという意味では1516年に書かれたトマ・スモアの『ユートピア』や、後に書かれるジョージ・オーウェルの『1984』にも通じる傾向が見て取れる。

19世紀に入ると、ロマン主義の時代になる。ロマン主義とは、理性や、合理主義に対し、感受性や主観に重きを置いた芸術の運動である。代表的なイギリス文学の作家としては、ウォルター・スコットがあがるだろう。架空の人物を過去の歴史に登場させて描く手法は、彼の著作『アイヴァンホー』において初めて考案されたものであったと言われている。他にも田舎の中流社会における女性の生活を皮肉交じりに描いたジェイン・オースティンなどがこの時期の作家として挙げられる。

1837年から1901年にかけて、イギリスはヴィクトリア朝時代に入る。この時期、産業革命による経済発展が頂点に達し、大英帝国が絶頂期に入る。ヴィクトリア女王は芸術家のパトロンになったこともあり、それに順応する文学者、芸術家も多くいた。ロマン主義の反動として写実主義自然主義の作家も登場した。写実主義の作家としては、チャールズ・ディケンズが挙げられる。代表作『デイヴィッド・コパフィールド』(David Copperfield)は、J.Dサリンジャーキャッチャー・イン・ザ・ライ』の冒頭で引用されていることでも有名である。この時期、自然主義作家として知られたトーマス・ハーディや、ブロンテ姉妹、トーマス・カーライル、ウィリアム・サッカレーなど、小説家の中には現実の暗部を描き出そうとする傾向が見て取れる。

20世紀に入ると、第一次世界大戦を経て近代社会の中で、モダニズム運動という前衛的な文学運動が起こる。イギリス文学において最も象徴的なのは作品の中で「意識の流れ」を用いたジェイムズ・ジョイスヴァージニア・ウルフである。「意識の流れ」はもともと心理学で使われた概念であり、「人間の意識は静的な部分の配列によって成り立つものではなく、動的なイメージや観念が流れるように連なったものである」とする考え方のことである。この手法は登場人物の無意識にあちらこちら移り変わる思考を描写するもので、これまでに無いリアリティを描き出した。例えば、 ‘Good Lord, that poor child's dress is in flitters. Underfed she looks too. Potatoes and marge, marge and potatoes. It's after they feel it. Proof of the pudding. Undermines the constitution.’ (episode 8)xvii「なんてことだ、かわいそうにあの子の服はびりびりじゃないか。食事も取ってないようだ。ポテトとマーガリン、マーガリンとポテト。気づいてからではいけない。まずは食わなきゃ。あれでは衰弱してしまう。」という描写が “Ulysses”にはある。今でこそこのような地の文における主観的描写はよく見かけるが、当時は真新しい手法であった。しかしながら『ユリシーズ』はアメリカ合衆国1921年に猥褻文書頒布で有罪判決が下り雑誌における連載は中断してしまう。

1930年代、共産主義に影響を受けた文学が数多く書かれるが、1940年代にはジョージ・オーウェル全体主義に対する警告として『アニマル・ファーム』や『1984』などのディストピア小説を執筆する。

第二次世界大戦後、多くの移民を受け入れて以来、多文化国家となり、文学にもその影響は如実に現れている。近年は日系イギリス人小説家カズオ・イシグロが1989年に『日の名残り』でブッカー賞、2017年にノーベル文学賞を受賞するなど、イギリス文学の多文化傾向が強まっている。

 

 

http://schulers.com/books/philosophy/Ulysses/Ulysses36.htm

【論文】"1984"で分かる、コントロールされている人

今回は第二次世界大戦という人類史上最悪の戦争が終わって直後に出版された “1984” について述べさせて頂きたい。

この小説は系譜としてはディストピア小説ということになる。当時の時代思潮としては、終戦後、枢軸国の軍事的脅威が薄れ、共産主義というイデオロギー、国で言えば旧ソビエトへの警戒が高まっていった時期である。よくあるジョージ・オーウェルのイメージとしては、共産主義批判や旧ソビエト批判の人、というものがあるだろう。また、彼の作品は、イギリス労働党への批判と解釈されたこともあった。勿論、そういった側面が全くないわけではないが、オーウェル自身は解釈の矮小化を少なからず恐れていたようだ。彼が Francis A. Henson にあてた手紙には“1984” に関することが次のように書かれている。 ‘The scene of the book is laid in Britain in order to emphasise that the English-speaking races are not innately better than anyone else and that totalitarianism, if not fought against, could triumph anywhere.’ 「英語を話す人種が生まれつき他より優れているわけではないことと、全体主義はもし戦わなければ、どこであっても勝利できてしまうことを強調するために、小説の舞台はイギリスにしてある。」(Orwell, p.546)このように、オーウェルが批判していたのは、旧ソビエトイギリス労働党共産主義などに関するものだけでは決してない。国、人種、言語すべて関係なく、個人の自由は簡単に奪われてしまうということだ。

主人公のウィンストン・スミス(Winston Smith)は真理省(Ministry of Truth)で働いている。過去の歴史記録や新聞を最新の党の発表により書きかえ、党の言っていることは全て正しいという状態を作る省である。真理省と聞くとフィクションのように聞こえるが、公文書改ざんという形で現在の日本の財務省国土交通省でも起こっていることである。

オーウェルが小説の中で描いている大衆をコントロールする手法は、政治家だけが使うわけではなく、大手広告代理店やその他民間企業なども連携して今日でも使われている。それらの手法は今もそこまで変わっていないどころか、進化し続けているようにも見える。

例えば短いフレーズを並べる手法だ。小説の中ではこのようなフレーズが挙げられる。

 

戦争は平和である (WAR IS PEACE)

自由は屈従である (FREEDOM IS SLAVERY)

無知は力である (IGNORANCE IS STRENGTH)

 

政府が何かしら短くて耳に残りやすいプロパガンダを並べているものは、個人的な体験で恐縮だが、上海を歩いている時にもよく見かけたものだ。1940年代の日本であれば「欲しがりません、勝つまでは」や「ぜいたくは敵だ」などが有名であろう。

現在に当てはめると、まず思いつくのは米国のトランプであろう。彼の ‘Make America great again.’ などの短いフレーズは我々の耳に強く残る。しかも「具体的にどういう政策で?」などの疑問はかき消されてしまう。参考までに付け加えると、トランプ政権発足後 “1984” の売上はアメリカで上昇した。日本政府も「人生100年時代」「貯蓄から投資へ」のような聞き心地の良い言葉を並べることが多い。日本の財政難などを考慮して論理的に考えれば「日本の年金制度は破綻するので、年金は払えません。」と解釈するのが妥当だ。しかしオーウェル的に考えると「年金制度は破綻しません。年金は払えません。」という二重思考(doublethink)が求められていることになる。

次に、小説 “1984” においてニュースピーク(Newspeak)という思考の自由を奪うための言語がある。このニュースピークは英語がベースになっているが、語彙を減らしたり、「真理省(Ministry of Truth)」のような公共機関を「ミニトルー(Minitrue)」のように短く略して言いやすくしたりと、自由な思考を奪っていく。小説の中の世界では「自由」などという概念も消されているので、あたかも国民が自分の意思で思想を選び取っている錯覚まで与えられている。現実的に考えると政府の方針で自国語の語彙を減らしていくことは難しいだろう。しかし、話す言語によって思考や言動がコントロールされることはある。例えば日本語には極端に相手を貶す言葉が少ない。日本語以外の言語には大抵、罵り言葉が豊富なバリエーションで用意されている。日本語話者は本人の意思とは別に、その言語によって悪口が下手になるのだ。

また、“1984” の中ではテレスクリーンという監視カメラとテレビを兼ねたような装置が登場する。プロパガンダを流し続け、思想犯罪(crimethink)をチェックするのだ。現在に置き換えて考えてみることはできないだろうか。GoogleなどはAIによってユーザーの好みをチェックし、そのデータをもとに広告を出し、物品の販売を促している。我々は、自分の趣味に合ったものを見せられ、あたかも自分の意思で決定しているように、より巧妙に行動をコントロールされていると言えないだろうか。まさに “Big Brother (Google) is watching you.” である。

近年TikTok, TwitterなどのSNSは、短くて理解しやすいフレーズでユーザーに生理的快感を与え、論理的思考を容易に奪ってしまう。これを政治利用したらどうなるか、この小説の世界観で考えてみると容易に予想できる。オーウェルが描いたディストピアは現在進行中と考えた方がいいだろう。

【英語・英文学・英文科】Fスコット・フィッツジェラルド、The Great Gatsby(グレート・ギャツビー)の解説、和訳⑬

初回から13回目になります。トムの独壇場は続きますが、他の三人はすこしウンザリし始めています。ニックは内心でなかなか辛辣なことを考えていますが、デイジーとミス・ジョーダンも「やれやれ」みたいな感じになってますね。

‘You ought to live in California—’ began Miss Baker but Tom interrupted her by shifting heavily in his chair.

「カリフォルニアに住むといいわよ……」とベイカーさんも話し始めたが、トムが椅子の中で重々しく体勢を変えてさえぎった

 

interrupt(~を)さえぎる

Los Angeles, California 1920

‘This idea is that we’re Nordics. I am, and you are and you are and——’

「要するに、俺たちは北欧人種なんだよ。俺も、お前も、お前も、そして……」

After an infinitesimal hesitation he included Daisy with a slight nod and she winked at me again.

トムはほんの少し躊躇してから、軽くうなづいて、そこにデイジーも加えた。そしてデイジーは私にまたウィンクした。

 

infinitesimal 微小の、無限小の hesitation 躊躇 

 

nod うなづく、うなづき

‘—and we’ve produced all the things that go to make civilization—oh, science and art and all that. Do you see?’

 

「そして、俺たちは文明化に資するもの全てを作ってきた。つまり、科学、芸術、全部だ。分かるか?」

 

go to do〈…するのに〉役立つ,

There was something pathetic in his concentration as if his complacency, more acute than of old, was not enough to him any more.

彼の集中研究には、どこか哀れなところがあった。彼の古いというより深刻な自惚れは、もはや自分に対するものだけでは不十分なようだった。

 

complacency 自己満足 concentration 集中

 

考察:トムの「俺は白人代表!」みたいな感じは、眉をひそめてしまいますね。アイデンティティを人種や国籍に過剰に求めてしまう人は、どこの国にもいます。そういう人を見ると個人的には「もしかして自分に自信が無いの?」って思ったりします。トムは自信過剰に見えますが、実は自分に自信が無いのかもしれません。

 

The Great Gatsby GRT GATSBY [ F. Scott Fitzgerald ]

価格:1,413円
(2020/10/9 00:00時点)
感想(0件)

教材としてのAnimal Farm

大学に提出するレポートをのせます。たぶんイロイロあとで訂正しますが。

 

今回は、ジョージ・オーウェルGeorge Orwell)の“Animal Farm”について教材として言及させてもらいたい。学校教材としてこの作品が優れている点は、英語教材としては勿論のこと、政治、歴史、働き方に至るまで、多岐にわたる分野を網羅していることである。どこかコミカルなおとぎ話のようにも読める点でも低年齢向けに扱いやすい。

まず英語教材としては、本文をそのまま例文として教材に使ったとしても差しさわり無いほど文章が模範的である。例えば“Mollie, it was true, was not good at getting up in the mornings, and had a way of leaving work early on the ground that there was a stone in her hoof.”(大石 55)という一文の中には“be good at~”「~が得意である」という中学レベルの連語から、“on the ground that~”「~という理由で」のような大学入試レベルの表現まで入っている。また、文章の長さも読解の練習としてはちょうどいいので、主語の見極めを試す時などに重宝するであろう。英文法的にも間違いがほぼ無いので、文法的お手本としても使える。

英語学習教材としてのみならずこの小説は政治を考える上でも、多くの問題提起がある。小説中、追放されてしまう農場主のジョーンズさんに代わって豚のナポレオンが農場を統治する。教材として使うとすれば、「権力を移動させる手段は他に無かったか。」「他に手段があるとすれば何か。」「自分がこの中にいたらどう動くか。」など、生徒への無数の問題提起が可能である。

学びという意味では、豚を中心とした家畜たちが農場の支配権を取ってからの方が、物語から多くのことに気づけるだろう。例えばこの話では、教養のある動物と、教養の無い動物が大きく二種類登場する。字が読めない家畜たちは、法律の条文を読むのさえままならず、豚の政治家から巧みに騙されてしまう描写がある。この描写一つ取っても「豚以外の教養ある動物はどう行動するべきだったのか。」「無教養な家畜は教養をつけるべきか。また、そのためにはどうするべきか。」「自分はどの家畜に近いか。また、どの家畜のようになるべきか。」など、おそらくここでも生徒に考えてもらう多くの点があるだろう。学校の先生としては「やはり教養をつけるために勉強は必要である。」などの模範解答を導いてしまいそうだが、この小説では字が読める家畜も豚によってコントロールされている。それゆえ、考えの浅い簡単な結論を出すだけではなく、より深い議論が可能ともいえる。

他にも、この物語の中では、政治家が取りがちな行動が散見される。例えば、牛から絞ったミルクをどう扱うか、というエピソードがあるのだが「ミルクは見張っておく。干し草の収穫の方が大事だ。」(大石 49)とナポレオンが言ってごまかすシーンがある。結局は豚が独り占めするのだが、実際の政治家をモデルにしているので、不正を隠蔽する政治家の手法が非常にリアルである。そして、日本の政治家と行動パターンが酷似している部分も見逃せない。「現在の日本の政治家との共通点はどこか。」「日本の政治家が同じことをしたら、国民としてどう行動するべきか。」などの議題を立ててみても面白い教材になるだろう。ニュースを見ている生徒などは「政治家の不祥事がうやむやになる過程は日本と同じではないか。」等々、具体的な政治的事象を思い浮かべるかもしれない。また、動物のための老後施設の予定が反故になる描写もあり、日本の年金制度などと重ね合わせて学生に考えさせると深い題材になるだろう。

 次に外せない要素としては、各動物の働き方がある。この小説は旧ソビエトがモデルとなっていることもあり、一面では国家運営の話として学ぶことができる。しかしながら、今日の日本では農場を企業として見る方が教訓的かもしれない。例えば、豚が運営する動物農園で馬のボクサーは三頭分の仕事をこなす。ロバのベンジャミンはジョーンズさんがいた時と同じように頑固に働き、余分な仕事はしない。猫や、白馬のモーリーは仕事をサボり、モーリーに至っては自分に合った農場主の農園へ出て行く。そして、誰よりも一生懸命働いたボクサーは最後、屠殺場に送られ殺される。「働き方として最も正解に近いのはどれか。」「自分は将来的にどう働いていくか。」などの命題を出してあげれば、職業や働き方を考える上でいい教材になるだろう。

 最後に、この本は歴史上の人物を家畜動物などのキャラクターとして描いている点が、教材として最も素晴らしいところである。豚のモデルであるスターリンは、飢餓に苦しむ民衆を見殺しにしたり、政治的粛清を行ったりと、小中高生に詳細を教えるのははばかられる人物である。しかし、豚が姑息な手段を使って不正を侵していても、どこかマヌケに見え、客観的に楽しく読むことができる。被害を受けるのも家畜のキャラクターなので、年齢が低い学生にはフィクションとして薦めてもいいかもしれない。いずれにせよ、自ら考える力を鍛えるにはもってこいの一冊であると言える。

 

(1993 words)

 

Works Cited

 

大石 健太郎.『対訳 動物農園―おとなのおとぎばなし』. 一藝社, 2010

 

Orwell, George. Animal Farm, Penguin Books, 1945

 

Hu, Zheng. www.huzheng.org. Animal Farm.  http://www.huzheng.org/geniusreligion/AnimalFarm.pdf , (accessed 2020-10-06)